雑貨コンサルタントへの依頼2 雑貨コンサルタント 富本

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著作「雑貨力®」より抜粋

前回「雑貨コンサルタントへの依頼1」に引き続き“雑貨コンサルタント”である筆者への相談事例を紹介したい。

前回は、開業企画に対する点検や既存運営店の診断など、総合的に相談、指導依頼があった場合の例を挙げた。今回は、ポイントを絞った相談と指導依頼、より具体的で即効性あるアドバイスを求められた事例を紹介する。*各事例は、実際例を総括したものであり、特定の企業や個人の具体例ではない。

相談事例:幹部やバイヤーを育てて欲しい

「店長を育ててくれ」

すでにショップを運営中、または事業計画を完成させオープンの各準備を行っている企業からの依頼。

ご承知のようにどんなに素晴らしい店舗であっても、要(かなめ)は人材。

比較的接客の機会が少ないであろうセルフチョイススタイルの雑貨店も「労働集約型産業」であり、スタッフの人数が少ないからこそ、その質やスキルに高いレベルが要求される。どんなに素晴らしいコンセプト、商品、店舗デザインであっても、店舗の成功は店長はじめスタッフの能力に左右される。

しかし、新規事業として、他業種から雑貨店経営に参入した企業には、店舗幹部、スタッフに対する教育ノウハウの蓄積がない。

経験者を公募することもあるが、開業後間もない、または開業前で認知度が低いショップに優秀で経験豊富な人材がたくさん集まることはそうないだろう。

まったく門外漢の社員が、その店舗の責任者や店長、バイヤーに配されることも多い。 

ある企業から、入社2年目の「若手社員」を100坪超の雑貨のセレクトショップの店長として育てて欲しいという依頼があった。他業種で成功しているその企業にとって「雑貨店」の開業運営は初めて。「雑貨」分野というだけでなく、流通、小売業としても初である。

通常は、販売スタッフとしての様々な経験を積み、主任、副店長、バイヤー、店長と昇進していくのが順当だろう。

社会経験さえも乏しい、若手社員を店舗運営の責任者に抜擢しなければならないのには事情があった。

ベテラン経験者を中途採用し、店長として管理運営を全て任せるつもりだったが、土壇場で辞退されてしまい、店長補佐にと考えていた若手社員を店長に配さざるを得なくなってしまったとのこと。

この企業も他の例に洩れず、少数(1-2名)の正社員を中心に、契約社員、アルバイト、パートスタッフ(登録20名)を中心とした店内人事を計画しており、正社員店長として、全スタッフを統率していけるだけの知識や能力を、一刻も早く身につけさせたいということであった。

開業3ヶ月前から約1年間に渡り、接客サービス面、販売促進、商品計画、取引先折衝、店内の人事組織づくり、スタッフへの指導方法などを中心にアドバイスとサポートを行った。

「上代って何ですか?」「女性アルバイトスタッフにいじめられて…(笑)」と言っていたいたその店長も、現在は後に入社した業界経験豊富な年上の「部下」からも一目置かれる辣腕(らつわん)店長として活躍しているそうだ。

同様にバイヤー、営業、商品開発担当者等、各職種別に指導、育成することもある。一般論、公約数的な指導ではなく、その企業、店舗の事情、担当者のレベルに合わせた指導を心がけている。

相談事例:スタッフに対しての研修

VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)、接客、販促手法(POP制作、ラッピング)など販売スタッフに対してのスキルアップのための講習会や勉強会の講師の依頼。

もちろん、その雑貨店のコンセプト、スタッフの現状にあった内容、レベルで実施するが、雑貨店のスタッフにディスプレイ“だけ”のスペシャリストは必要ないし、華美なラッピングのできる“達人”も必要ないと考え、様々な業務を上手くバランス良く行うことができるスタッフになってもらうための講習を身上としている。

テーマにもよるが、閉店後の店内で、ロールプレイングを交えた接客研修、店頭の商品や陳列を確認しながらのVMD、販促講習も効果が高く好評である。

相談事例:仕入れ先を教えて欲しい/紹介してくれ

「仕入れ先のリストを売って欲しい」「有名店の○○○の仕入れ先のリストはないか?」「売れる商品の仕入先を紹介してくれ」などの取引先(メーカー、商社、卸等の商品供給企業)情報に関する相談や依頼。

様々なコンサルティング企業のなかには、この種の情報を提供することをビジネスにしているところもあるのかも知れないが、筆者はこういった依頼にそのまま応じることはほとんどない。

良い=仕入れたい、売りたい商品を扱っているからその企業と取引をしたいというのが本来の仕入れ先の探し方、選び方。

他社の仕入先リストや誰かの紹介、客観性に欠ける情報を頼りとした商品開拓(仕入先探し)は、本末転倒だ。

前後の文脈なく、唐突にこういった問い合わせをしてくる企業のほとんどは、商品や業界に関する調査・研究が不足していることが多い。

中には有名雑貨店の間では特別な取引先リストがあって、極秘裡に高額で照り引きされているのではないかと思っていた(笑)という企業もあったくらいである。

調査・研究不足であると考えられる問い合わせ企業には、業界誌(本誌「月刊パーソナルギフト」等)や流通関係の業界紙を知らない、精読していない場合や、関連大型見本市(インターナショナル・ギフト・ショーをはじめとした)、問屋街を訪問したことがないという場合も多い。

それら業界誌、見本市、問屋街などの存在を知ってもらい、実際に商品や取引先情報の様々な「収集方法」を知り、自ら研究・調査してもらうことが、その企業にとって、将来にも活用できるノウハウになる。

仕入れ先のリストを提供するよりも、仕入れ先の「探し方」を身につけてもらうことが大切だと考えているため、そのレクチャーを行うことが多い。

コンサル売り場例

魚を釣ってあげるよりも、魚の釣り方を教えたい

相談事例:商品開発、卸売りしたい

「こんな商品を企画している」「これを卸売りしたい」「この商品は売れるか」など、メーカー、卸売企業(既存企業、創業予定企業)からの雑貨商品に関する相談。
 サンプルや企画書などがあればその商品のデザインや仕様、設定価格など商品全体の点検や診断を行う。

比較すべき競合商品。研究すべき卸先候補(小売店他)のリストアップなど、単にその商品自体の良し悪しだけでなく、マーケティング戦略に関してのアドバイスも含めて提案する場合が多い。

また、利益計画、製造や物流コスト軽減方法、生産量、営業方針に関してのアドバイスを行うこともある。
 時に即効性のある内容として、各有名店への卸売の営業アプローチ方法、各種見本市への出展方法やその効用を伝えることなどもある。 

相談事例:マニュアルを作ってくれ

多店補展開するにあたり、統一した各業務マニュアルを作ってほしいという依頼。

これは単にマニュアルという書類(冊子)を作成するということだけに留まらない場合が多い。

マニュアルづくりをきっかけに現在の業務内容を精査、改良し、より洗練、完成されたものにしたいという意向を含んでいる場合がほとんどだからだ。

作成の手順としては、現在の全ての業務内容をリストアップし、場面別に整理することからはじまる。営業時間中の店頭で各業務の所要時間を計ったり、現在のスタッフの能力を取材することなどもマニュアルづくりの範疇だ。

次にその各業務内容が効率的でその店に合ったものか検討し(時には改良し)、わかりやすくまとめていくということになる。

また、後に改訂しやすい内容にしておくことも肝心だ。マニュアル(業務の手順)は、日々、進化するものだからだ。

一度まとめたものでも、半期、一期などの一定期間毎に見直し、状況に応じてバージョンアップする可能性を想定しておくことがポイントとなる。

相談事例:売上げをとにかく増やしたい

「売上げ(利益)を増やす」開業計画の点検、店舗診断、スタッフの教育、仕入先開拓、展示会への出展方法、営業方法、マニュアル作成などの全ての依頼や相談はこの為にある。

そう、当たり前だが、どんな相談や依頼も、ビジネスにおいての最終目的はこれだろう。ただ、「売上げ(利益)をとにかく増やしたい」という直接的な表現の問い合わせや依頼の場合には、切羽詰まった事情があることも。

いろいろと悩み、様々な方法を試みたが、万策尽きてしまった。大変努力しているのに一向に効果がなく、何処がいけないのかわからないなどの暗中模索の状態。赤字が累積し、このままでは早々に閉店(整理)せざるを得ない成績といった場合が少なくない。

こういった依頼の店舗の場合は、客観的かつ中立な立場での「店舗診断」を行うことからスタートし、コンサルティングしていくことになる。

結果、出店立地と商品構成のミスマッチ。売上、利益、経費予測の大きな読み違えなどの、事前(開業前)に調査、検討すること、防ぐことができる場合も多く、大変残念に感じることがある。

その診断内容にもよるが、定休日や営業時間の変更、商品の改廃、取引先の変更、内外装の変更などの工夫から、大幅なリニューアル、時には店舗移転という提案をする場合もある。

これまで、様々な企業、個人の方から「雑貨」「雑貨店」ビジネスに関してのたくさんのお問い合せやご相談をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。皆様のビジネスの更なるご発展を心よりお祈りしております。

著作「雑貨力®」より抜粋